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何でも雑感。

物語

とべないつばめ

つばめの巣

【お父さん!なんかできてる!家の上に変なかごみたいなのができてる!】

小3になる息子が慌てて家に入ってきた。

なになに?
軒先を見ると、小さな鳥の巣ができていた。
もともと、つばめがよく巣を作っていたのだが、ここ2~3年見ていなかった。

<<これは、つばめの巣だな。今から卵を産んで温めてつばめのひなが生まれて来るよ>>

今ならまだ、巣を壊せばまた別のところで巣をつくるのだろうが、
作ってしまったものは仕方がない。と、嫁。

今年はひなが巣立つまで遠い目で眺めることにした。

生まれた日

小3の息子は毎日毎日、学校に行く前に、つばめの巣チェックをしていた。
親鳥のつがいが、毎日毎日せっせかと何かを運んでいる。
卵の下にひくふわふわの布団の様なものなのか、生まれたら食べさせるための餌なのか。
かなり高いところに巣をつくったので中が見えない。
毎日2匹がいるのを息子はチェック。
雨の日も風の日も、帰ってきているか気になるようだ。

そうこうしているうちに、1匹は必ず巣にいるようになった。
おそらく、卵を温めているのだろう。誕生まであとわずかだろう。

【お父さん!なんか口がいっぱい見える!】

誕生したのだ。見える限りで5匹。口を開けて餌を待っている。

<<ここから何日かお父さんとお母さんつばめが餌を持ってきて食べさせるんだぜ。つばめさんはすごいからもう何日かしたら自分で飛んでそれでお父さんとお母さんとは別れて一人で生きてくんだぜ>>

厳しい動物の世界だ。そういうものなのである。

【え~でもそれだと、妹とかと遊べないじゃん】

自分自身は5歳になる妹と、もう4年も一緒にいるという自覚はあるようだ。
毎日一緒に楽しく遊んでいるのに、つばめの家族は、何日かするとみんなはなればなれになるこの自然界の掟がなかなか酷に写ったらしい。

<<そうだよ。人間くらいなもんだぞ20歳の大人になるまでお父さんお母さんに助けてもらう動物なんて>>

と、さすがにまだわからないであろうことを小3の息子に言ってみる。いつか何か感じでくれるのだろうか。

巣立ちの日

小3の息子はそれから毎日、学校に行くとき、ラジオ体操に行くとき、家に帰ってきたとき、友達の家に遊びに行くときすべてにおいて一度つばめの巣をチェックするのが日課になった。
と言っても、毎日毎日口を開けて餌を待つひな鳥に対して一生懸命餌を持ってきている親がいるという構図だ。
向こうも、息子が人畜無害の温かく見守ってくれている動物だと認識したらしく、最初の頃は少し警戒していた感じだったが、最近は息子の目の前をびゅんびゅん飛ぶような感じになっていた。
息子のことを家族くらいに思っているのだろうか。

あくる日、私が少し早く帰宅すると、いつも見える口の数が少ない気がした。
よく見ると、下に小さな鳥の毛が1枚。

<<いよいよ巣立ちが始まったようだぞ。1羽1羽と、どんどん飛んでくからな。みんなにバイバイって言ってあげな>>

と、息子は

【そうかぁ。もう巣立つのかぁ来年また誰か巣をつくりに来てくれるかなぁ。また来てね!】

と叫んでいる。
母親はフンの処理などで、もう来てほしくないなぁと思っていたことであろう。

とべないつばめ

巣立ちが始まり数日が経過した。
巣の下にはフンが落ちるので受けに新聞紙を引いていたのだがここ数日新聞紙がまったく汚れなくなった。
いよいよすべて巣立ったようだ。
やれやれ。。と思ったのもつかの間。軒先の引き戸の敷居に小さなつばめが1羽いた。

もう少しでとでつぶすところだったと焦りつつ、なぜここにいるのだろう。どうして逃げないのだろうと不思議に思った。
もしかしてもう死んでる?
しかし、よくよく見ると、首を小さくかしげながら、瞬きのようなことをしている。普通に生きているではないか。
ではなぜ逃げない?
おそらく、力が無く、逃げることも飛ぶこともできなかったのだろう。眉間あたりにちょっとだけ白い羽毛が生えているつばめ。末っ子なのだろうか。

息子が

【このつばめさん、大きくなるまで何かしてあげた方がいいんじゃないの?】

気持ちはよくわかる。

<<でもな。人間が助けてこのつばめが生き延びて飛べるようになったとしても、それはダメなんだ。生きていけないんだ。自然ではね、絶対助けちゃダメなんだ。>>

残念だけど、フンは巻き散らかされるが、手を貸さず、このつばめの最後まで見てあげようということにした。

無情にも時間というのは過ぎていくもので、そうこうしているうちに3日経過した。
3日経過しているが飛び立つこともなく、大きく動くわけでもなく、エサもどうしているのか。。。このまま飛べずに餓死するか、猫やイタチの類に食べられてしまうか、そう長くはないだろうと思っていた。

4日目、いつものようにいるのかなと思って覗いてみたらいなかった。
いつも隙間に隠れているのに、隙間にもいない。
あぁ。亡骸がないということは食べられたのか。。残念だ。。。

と思っていたのだが、よくよく見ると、周りには羽も、血も、骨も、何もない。
どうぶつがくわえて行ったにしても、羽の1枚も落ちていないのはおかしい。

まさか、もしかしたら。。。と思った矢先に小3の息子が、

【あー!父ちゃん!つばめさん!】

興奮して、父さんと言えなくなった息子。
その息子の目の前をつたないながらも、パタパタ羽をはためかせながら飛んで行ったつばめ。眉間に白い羽毛があった。
どうやらなんとか飛べたようだ。
息子に最後の挨拶をしに来たのだろうか。来年はお前が我が家に巣をつくるのかな?

我が家のつばめは全員無事に巣立ちましたとさ。

 

おしまい。