とあるEC運営仲間からこんな質問が来ました。
うちの社長と、在庫をもう少し積み増せないか話をしていたときに、『うちの会社の回転率は6だから。。。』みたいなことを言われたんだけど、そもそも回転率って何?
在庫積むのに必要な数字?
と、聞かれました。
回転率とは
ここで簡単なご説明を。
『回転率』だけではちょっと言葉足らずですね。いろんな回転率があります。
ただ、回転率というのはどんな時でもそうだよということで言葉の説明をします。
ベースの数値が何回転がったかという数字
基準になる数字が何なのか、回転させるための数字が何なのかということではありますが、回転させる数字は、基準の数字の何倍か?ようは何回転したらその数字になるのかを表したものを回転率といいます。
経営の世界で回転率といえば総資本回転率
経営・会計の世界で回転率と言われれば『総資本回転率』を指すのではないでしょうか。
これは、売り上げが総資本(資本金などの総資産)で割った数値です。
この売り上げを作り上げている資産がどれだけか。数値が高ければ高いほど資本効率のいい会社といわれます。
高ければいい、低ければ悪い。。。と一概に言えない
例えば、年に1度だけしか仕入れの機会が無いような商材の場合、仕入れは年に1度のみで、その1度で1年分仕入れをします。
そして、食べ物のようなものの場合、まとめて2年分などという調達もできないため仕入れた商品は1年以内に捌くでしょう。
そしてさばいていく方(入金)は、1年かけて掛けの回収であったり手形であったりローンのような分割払いになったりします。
そうなってくると、仕入れ額に利益を載せた分の1サイクル分の売り上げなどの収益が1年で一回転しかしないため、回転率は限りなく1に近づくはずです。
そして、そのようなビジネスモデルの場合、企業全体の余力分だけ1より小さくなるはずです。(1億円の総資産に対して仕入れが5000万、利益を載せて販売して7000万になるとした場合、回転率は0.7になります。しかし、この場合、売り上げがすべて金未回収で終わってしまったとしても、まだ来年の仕入れ分の5000万円が現金で残っていることになりますので数字的だけを見れば資金的な余裕があるという状態です。)
回転率が0.7だったから、危険な企業か?というと、上記のようなモデルの場合まったく危険ではありません。むしろ1を超えてくる方が危険に見えます。(1サイクルしか運営できないはずのビジネスモデルなのに、資本が転がるということは、キャッシュフローがあまりよろしくないことを示すから。上がってくる売上から、その売り上げのために仕入れた支払い代金上がった売り上げから支払いに回さないと回転しないはずだから、今上がった売り上げも仕入れの支払いににまわしていることの証左である。もちろんだからと言って危険かどうかもこれだけではわからない。即現金化できる資産がどれくらいあって、実際のキャッシュフローが余裕があるのか危険なのかほかの数字も見定めないとわからないだろう。)
逆に、回転率が6とか10なのに、商売としては低単価商材の小売りだった場合はどうなるのでしょうか?
小売、これはお店やECなどで商品を一般顧客のエンドユーザに直販しているということだと定義して、回転率が10、1000%は、資本金に対して売り上げが10倍あるということになります。
いいじゃないですか!
と、一見そう見えますが、実はそうでもないのです。
例えば回転率10の、この会社の総資産が100万円だった場合、売り上げは1000万と推測できます。
売り上げ1000万をあげる企業の総資産が100万円では、1ヵ月分の仕入れ代金を売り上げ入金の前に支払うと、手元現金がほとんどないですよね。
売り上げが振り込まれるのはECの場合では、1か月後とか2か月後になります。レジのお金が売り上げですという実店舗の場合も、物がなくなれば仕入れをしなければいけませんが、レジに溜まるお金の前に仕入れ代金の支払いが来てしまうような場合は手元現金が少なすぎるという結果になります。
そうなってくると、スタートした時から3か月後程度まで、数字上は売上を上げていても、従業員に払う給与がまともに払えない可能性も出てきます。
なので、一般的には回転率がいい会社で、小資本の場合、仕入れて売って入金というサイクルの穴埋めをするために融資を受ける必要が出てきます。もしくは増資して資金調達の必要があります。
負債も信用度として推し量る材料としてはそれだけでは薄い
上記のように、もともとの資本が小さいため現状の売り上げに対応しきれいない場合にこそ融資を受けることで、資金の立ち枯れを防ぐことが本来の融資の在り方の一つであったりします。
しっかり黒字計上できている企業だった場合、負債があったとしても大した問題ではなく、むしろ安全な体質といえます。(銀行がしっかりお金を貸すことができるほど、先の見通しがあるといえる場合があるから。)
しかし、上記のような条件だったとして、そのうえで決算が赤字だった場合、ビジネスモデルが破たんしている可能性もあり、融資そもそもができるかどうかも不安が残ります。
どうやったら黒字になるのか見えません。新事業なのか、今のこの収益モデルで黒字化する損益分岐点になる売り上げがどれだけなのか、その売り上げの積み増しは実現可能なレベルなのか、見極める必要があるでしょう。
これから新たに取引しようとしている企業が上記のような状態で融資を受けていないとした場合、融資を受けてこなかっただけなのか、融資が受けられなかったのかを見極める必要があるでしょう。
前者なら、融資を受けることで安定した経営ができるようになっていきますので、ぜひ経営者にアドバイスしてあげてください。
後者の場合、数字には見えない何かの危険を銀行が嗅ぎ付けているのかもしれませんから、取引するにしても、掛けや手形はやめた方が良いでしょう。
数字だけを見てもわからないのが企業財務体質
上記を見てもわかりますが、回転率で上がってくる数字が一緒でも、企業のビジネスモデル(入金と出金のスパンや特性)によっては良くも悪くもなる数字です。
財務諸表で上がってくる数字はすべて、その会社の特性に合わせて読み解いていく必要がありますから、この数字が高いから大丈夫、低いから危険と決め打ちして見ないようにしましょう。
大塚家具から見える苦しさ
大塚家具は先のお家騒動以来大変苦しい経営状況が続いています。
細かいことは書きませんが、一番の問題は決算短信を出してすでに年当初に予測していた売り上げ計画から大きくずれ込んでいるにもかかわらず修正した予測を出さなかったことです。
お金を借りられる・借りられないとか、お家騒動でどのくらいのマイナスが出ているとか経営者が云々とかそういう問題よりも大きいのが予測を修正できないくらい先の見通しを立てられなくなっていることです。
残り数か月で今までの倍の売り上げを計上しても微妙な情勢なのに修正を出さないのは放棄したとみなされてもおかしくないですよね。
ぜひ一度あちらの会社の決算報告資料や決算短信を見てみられることをお奨めします。
ご自分のビジネスは大丈夫ですか?
売り上げ予測が、現状と乖離している場合、『絵に描いた餅』といわれるものになります。
想定よりも良くても悪くてもずれが起きるのは予測ではありますが、あまりにも乖離している予測はダメです。
想定以上に良かったから、まぁいいや。も、ダメです。
その想定外が、本当に予測のつかない追い風のおかげなのであれば、それは仕方がないですが、予測できる範囲内の中で想定外に良かったというのは経営者に先を見通す目がなかったと言わざるを得なくなります。
経営者の方以外でも、自分のまかされている事業の予測は立てましょう。
1日の売り上げまで落としこめば誰でもできることです。