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財務運用状況報告書をみて考える~一口馬主ポートフォリオ~

サラブレッドクラブライオン様は、なんとご丁寧に【財務運用状況報告書】という書面を一頭一頭すべてに対して作成し会員に配布してくれます。
この書面自身は、確定申告時に貼付することもできますが、(確定申告にはここまで細かいものは必要なく、確定申告用の書類も出してくれます)この書面は、競走馬1頭1頭の年次決算資料です。
企業の決算資料とほぼ同等の資料です。
なので、3頭の競走馬を持っているということは3つの企業の決算書を見るのとおなじということになります。
今回はこの資料を見てどんな競走馬に出資していると有利に働くのか、などを考えてみました。

一口馬主の収益と税金

出資した競走馬すべてが募集価格以上に賞金を稼いできてくれれば、本当はそれがいいですよね。
しかし、競争の世界ですから、そんなうまくいくこともほとんどありません。

アーモンドアイ。シルクホースクラブで募集総額3000万円の競走馬でした。一口6万円だったとのことです。
そのアーモンドアイは稼いだ賞金から考えると、200~300万近い配当があったと考えられます。
表面上はそうなりますね。
しかし、アーモンドアイが賞金を稼いで来たら、その都度源泉税を徴収されています。
そして、アーモンドアイのみの出資であればいいのですが他に走っていない競走馬に出資していた場合、一口馬主の収益は【損益通算】できますので、黒字の競走馬の収支と、赤字の競走馬の収支を合算したうえで収益が確定し、納税額が決まります。
なので、アーモンドアイがバリバリ賞金を稼いでいる間は、ほかの競走馬たちが走らなければ、それだけ損益通算では黒字を減らしていけるのです。

減価償却という考えかた

一口馬主というのは投資ファンドとして成立しているものでありますので、一頭一頭で、ファンドとして毎年決算(運用決算)をしなければいけません。
そのうえで、競走馬ファンドのばあいは、馬代金(募集価格・日々の維持費)というのをどうとりなすかということになります。

馬代金は資産として競走馬という科目で計上しています。
簡単に言うと、配当となる賞金を稼いでくる大事な資産であるわけです。
そして、競走馬は経年により価値が目減りするという考えから、徐々に競走馬に組み入れている額面が減っていきます。
なので帳簿上は1歳までが最高額評価であり、たとえどんなにすごい成績を残している競走馬であったとしても、2歳から徐々に資産価値は目減りしていきます。
そして、引退時には競走馬としての価値を0円にして処理することになります。
牡馬で種牡馬になることとなり、種牡馬として売却する際の売却額とはまた別の資産価値ですので、そのあたりは気にしなくても大丈夫です。
そして、毎月私たちが維持費として支払っている飼い葉代。こちらは毎月競走馬の資産に組み入れていかれます。
なので、価値は減っていくのと同時に飼い葉代という形で競走馬という科目に仕入れ資産として一定額を組み入れているような関係性になります。

で、価値の目減りについては減価償却という形で毎年一定額を費用(経費)として償却します。
おそらく3~4年で償却する計算で組み入れられているようです。
帳簿上の決算処理としてはこれがすごく重要です。

減価償却費を組み入れた決算上の赤字はキャッシュフロー赤字ではない

例えば1000万円程度の競走馬の2歳時の決算であれば、減価償却費は大体150~200万程度になっています。
これは、決算書の経費の部分で計上し、資産部分の競走馬の価値を減免させる処理をしていきます。
そうなってくると数年後には募集時の募集額はすべて処理され価値が0円に近づいていくことになります。(維持費を毎月資産として組み入れているので0円になるときは引退するときになります。)
これは私たちのお財布的にはどうなるのかを解説します。

出資時

出資時は、この資産計上するための競走馬代金を支払います。基本的に一括で支払ったと想定すると、まとめて一気に資産部分を現金で拠出することになります。
1000万の競走馬で500口なら一口2万円です。
そして、2歳になりデビューします。
この競走馬は素質がある競走馬だったようで新馬戦を勝ちました。そして、その後コツコツ賞金を稼ぎ、2歳終了時点で総額1000万円を賞金などで稼いできたとします。

数字上はぱっと見ると、これなら馬代金をペイできてこの先は儲けになっていくんだなという風に見えますが、決算書上はそうではないのです。まずは、資産計上されている馬代金の1000万円から約200万ほどを減価償却費として費用計上します。
それ以外に、1年間でかかった経費(身上金や、事務手数料、飼い葉代など)を賞金総額から引いた残り額面が黒字額として残ります。
1年で1000万ほど稼いだ馬代金1000万の馬であれば、少し赤字という決算になりそうですね。なので、源泉税をひかれていた場合、確定申告をすれば還付を受けることができるかもしれません。

2020年グラディトゥーの2歳時の決算書

サラブレッドクラブライオンの2020年2歳馬に、グラディトゥーという競走馬がいます。
募集総額1800万円の競走馬で、2歳新馬戦で見事優勝、2020年ライオン2歳馬で唯一の新馬勝ち馬となった競走馬です。
その後も1勝Cで2着など入着を繰り返し賞金総額で1600万近くを稼ぎ出しました。
表面上はもうちょっとで馬代金をペイしてプラス収支に入るように見えます。少なくともキャッシュフロー上はあと1勝できれば馬代金と競走馬の維持費がすべて出る状態になりますのでキャッシュフロー的には黒字化しそうです。
しかし、決算上は全然違います。
減価償却費がまず375万ほど計上されていてることがあります。これはその場で現金が減っているものではありませんが減価償却という正当な費用計上です。
そのほか諸経費を差し引いた当期粗利益は120万ほどのプラス。最終損益は50万ほどの赤字という計上になりました。
これによって何が言えるのかというと、あらかじめ差し引かれている源泉税の還付を受けることができる可能性があるということです。
配当金はある程度もらっていると思いますが、ただ、ファンドとしては赤字決算だったということになります。
普通に見れば、馬代金程度を稼ぎ出してきたんだからあとは儲けだなというふうに見えますが、帳簿上は、競走馬の価値の15~20%程度を使って稼いだ賞金が1600万程度。その中から諸経費を差っ引いて最終的に残った利益がマイナスとなり、まだ、このファンドとしては資産が80%程度残った状態であるということを示しています。
なにせ決算的には赤字の決算となっていますから、あらかじめ払い込んだであろう源泉税の還付を受けることができます。
2020年のグラディトゥは非常にちょうどいい絶妙な賞金加減でちょうどよい収益だったといえるのかもしれません。
もちろん大きなレースを勝って大きな配当を受けたいところですが、2歳時で、クラシックに行けるかもしれないという程度の活躍だったのはちょうどいいのかなと思います。

一口馬主の決算(確定申告)は損益通算できる

単発の競走馬での出資については、上記に書いたような感じになり、減価償却という、その場でキャッシュが動かない経費計上ができることから黒字を多少圧縮できることになります。
しかし、単発より面白いのが複数の競走馬に出資しているときです。
これは、【損益通算が可能】であることから面白さが出てきます。
よくあるのが、アーモンドアイのように大変大きく稼ぎを出している競走馬1頭を持つより、その支払い税金分程度の赤字を抱えてくるような競走馬を持っている場合に、黒字と赤字の相殺で税金の還付が受けられる可能性が高まるところです。
例えばある競走馬で100万程度の黒字を達成していて、その上で自分の出資馬他3頭で100万程度の赤字を計上していた場合、損益通算ができるので収支はプラマイ0円という形になります。
そうなると、払い込んでいた源泉税は還付を受けることができます。
基本的に全頭が黒字終始じゃない限りは一口馬主投資の場合は少額だったとしても還付を受けられる可能性が非常に高いです。
なぜなら、単発競走単位で得た賞金からある程度厳選するルールになっているためです。
1年を通して稼ぎ続けた馬な1頭なら、おそらく払い込んだ源泉税はそのままになる可能性が高いです。(怪我をして高度な手術を受けて高額の支払いが発生したなどがない限りは。。。です。)
しかし、複数頭に出資して、走る馬は良いとしても、走らない馬は得る賞金もほとんどなく、源泉もされておらず、おまけに決算で赤字になることが多いわけですが、そうなるとなおのこと、走る馬と、損益通算できることで、支払った源泉税が余分に払った税金になる可能性が高まるということです。

仕組みから見る一口馬主ポートフォリオ

難しいので、細かいことは税理士さんや公認会計士さんに聞いた方がいいと思います。
しかし、これらの仕組みから考えて一口馬主投資でどんな競走馬をラインナップに入れていくのがいいのか考えてみました。

募集価格は安価なほど黒字化しやすい

支払う時の額面が大きいだけではありません。
1億円の馬で合っても、1000万の馬であっても、デビューは2歳からですし、現実的なラインで競走馬として最前線で走っていられる年齢も高額でも安価でもさほど変わりません。
また、先んじて、いつ引退するかを決められるものでもないのが競走馬ですから、ようは、1年で経費として落とせる減価償却費については馬代金に準じます。
高額の馬ほどその減価償却費も高額になります。
だから、高額の競走馬ほど、決算上は赤字になりやすい性質を秘めていますので、高額馬は買えないのではなく、全体で黒字化しそうなときほど組み入れることで黒字を圧縮できます。
安定して黒字化することが見えてきた場合は高額の募集馬をポートフォリオに組み入れていくことでその減価償却費で黒字を圧縮できる可能性が出てきます。
もちろん高額馬ですから、その馬すらもよく走り賞金を大きく稼いで来たら制御不能になってしまいますが、毎回毎回そうはならないと思いますので、調整でラインナップに入れていくことになっていくのが高額馬ではないかと思います。

同じ意味合いで低価格帯の募集馬の場合、黒字化しやすいということになります。
馬代金が500万の馬の場合、新馬戦を買っただけで、馬代金はペイしますし、下手をしたら飼い葉代もほぼ出てしまいます。
そうなると、減価償却でその馬代金の500万を一括償却できない分、経費計上が一部にとどまる分、黒字化しやすいとも言えます。
なので安価な馬を組み入れていくときは複数頭組み入れることで黒字額を抑えなおかつ出資馬ラインナップを増やしていけることになります。

上記を踏まえると、ある程度走る馬と走らない馬が混在している状態であれば税金的には有利に働きます。
実際の流れとしては

  • 初年度:1000~3000万円台の競走馬で【複数持つこと】
  • 2年目:初年度と同じ程度の価格帯と頭数でラインナップをそろえること
  • 3年目:初年度の競走馬の成績と出世のめどが見えている状況に応じて高額募集馬を組み入れるかどうかの判断
  • 4年目:黒字・赤字の見込みから、競走馬のラインナップを考える

5年目以降は3~4年目と同じような動きで高額馬の組み入れの可否を考えていきます。
1頭当たりの出資口数については、黒字化しそうな年に口数を増やすといいでしょう。
1頭当たりの口数が増えるということは減価償却費も増えますから、黒字を圧縮できる可能性が出てきます。

特に高額募集馬については初年度から出資するのも悪くはありませんが、2年目・3年目あたりからラインナップに組み入れていくことで、もし出世している競走馬がいた場合、高額馬の減価償却費の影響で源泉税の還付を受けることができてくることで、またその還付金で新たな新馬に出資できることにつながっていくかもしれません。
なににしてもこの好循環モデルを組み入れていくためには出世してたくさん賞金を稼いでくる馬が出資馬から現れてこないといけないのですが。。。

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